物価上昇を差し引けば1980年より安い
米労働統計局(BLS)によると、1980年1月の米国の都市部では、グレードAのLサイズの卵1ダースが平均88セントでした。それ以来、物価は全体として大きく上がっています。二つの時点を公平に比べるため、ここでは各月の価格を2026年8月時点のドルに換算します。換算に使うのは、BLSが都市部の消費者物価を測る消費者物価指数(CPI-U)の、その月から2026年8月までの上昇分です。こうして計算すると、1980年1月の1ダースは3.78ドルにあたります。
2026年8月の平均価格は2.27ドルでした。1980年で最も安かった月でさえ、今のドルに直せば2.96ドルで、これより高かったのです。
2026年8月の物価全体は、1980年1月の4.31倍になっていました。一方、卵1ダースの平均価格は2.58倍にとどまります。店頭の値段は上がっていても、CPIで測る生活費全体と比べれば、卵は安くなったわけです。

山あり谷ありの46年
値下がりは一直線ではありませんでした。以下の金額は、店頭価格と断ったもの以外はすべて2026年8月時点のドルに換算したものです。2000年1月には1.93ドルまで下がっていました。その後の急騰は、鳥インフルエンザの流行と時期が重なっています。2024年から2025年にかけての急騰について、米農務省(USDA)は、採卵鶏が失われたことを一因に挙げています。
2015年。H5N2型の鳥インフルエンザが、この年の春に米中西部の養鶏場を襲いました。価格は2015年9月に4.18ドルまで上がり、その後2019年6月には1.57ドルまで戻りました。
2022年。2022年2月に鳥インフルエンザが再び発生しました。USDAの経済調査局(ERS)は、その年の末までに失われた採卵鶏を4300万羽以上と数えています。
2024年秋から2025年初め。2024年秋の半ばから2025年3月上旬にかけての新たな流行で、採卵鶏5070万羽が殺処分されました。ERSは、卸売価格と小売価格が過去最高を記録した一因として「卵への強い需要と供給の逼迫が重なった」ことを挙げています。2025年3月には店頭で1ダース6.23ドル、2026年8月のドルに換算すると6.52ドルに達しました。これは、データのある1980年1月以降の559か月で最も高い値です。
その後は2026年6月の2.15ドルまで下がり(2025年秋にはBLSの数値が欠けている月があります)、8月には2.27ドルへやや戻しました。

卵の値段を働く時間で測る
ここまでは卵の値段を物価全体と比べてきました。安いかどうかを測る方法はもう一つあります。それを買うために何分働けばよいか、です。
BLSは、民間企業の生産・非管理職労働者の平均時給を公表しています。サービス業では、管理職でない従業員がこれにあたり、現場で働く監督者も含まれます。製造業、鉱業、建設業では、生産や建設の現場で働く労働者がこれにあたります。この数字は1時間あたりの額面の給与で、所得税などが差し引かれる前の金額です。BLSによると、福利厚生、不定期のボーナス、雇用主が負担する給与税は含まれません。1980年1月の平均時給は6.60ドルだったので、卵1ダースは8.0分の労働に相当しました。2026年8月は32.53ドル(BLSの速報値)なので、1ダースは4.2分です。必要な労働時間は48%減ったことになります。価格がピークだった2025年3月には、1ダースに12.0分の労働が必要でした。
2026年8月の時点で、この労働者たちの時給は1980年1月の4.93倍になっていて、CPI-Uの上昇(4.31倍)を少し上回っています。そのため卵は、物価全体と比べるよりも、賃金と比べたほうがさらに安く見えます。(BLS自身がこの層の賃金を物価上昇分で調整するときには、賃金労働者と事務職の人々の支出をもとにした、少し異なる指数CPI-Wを使います。)
これは多くの労働者の平均で、個々の家計の事情を表すものではありません。

ケージフリーの卵と有機卵
BLSの平均価格が対象とするのは、グレードAのLサイズの白い卵1ダースという一つの品目です。BLSの現在の説明では、この品目は「有機、非有機、ケージフリー、放し飼い、従来型」の卵を「含む」とされています。そして米国の鶏卵業界全体では、卵の種類の構成が大きく変わってきました。
ERSの推計では、2017年に米国の採卵鶏のうちケージフリー(ケージに入れずに鶏舎内で飼う方式)の鶏は12.9%でした。2019年には、有機認証を受けた鶏が全体の4.5%を超えていました。
USDAの農業販売局によると、2025年9月1日の時点で、食用卵を産む鶏のうち38.7%が有機ではないケージフリーで、6.6%が有機でした。ケージ飼いとケージフリーの比率は55対45です。(2017年のERSの推計には有機の鶏が含まれているかどうかが書かれていないため、二つの数字は数え方が完全には同じでない可能性があります。)
支出も同じ方向に動きました。米国で小売の卵に使われたお金のうち、動物福祉や生産方法の表示がない白い卵の割合は、2008年1月の41%から2018年12月には27%に下がりました。
こうした種類の卵は、たいてい値段が高めです。2008年から2018年の小売販売を調べたERSの研究では、ケージフリーと表示された卵は、その表示のない同等の卵より平均13.8%高く、有機卵は40.9%高く売られていたと推計されています。
この変化はBLSの平均価格に表れているのでしょうか。1980年や2026年にBLSが価格を調べた卵のうち、ケージフリーや有機がどれだけを占めていたかは、ここで使ったどの資料も示していません。飼育羽数や支出の割合で代用することもできません。仮にBLSが調べる卵がこうした種類へ移っていたなら、その移行は、ほかの条件が同じである限り、平均価格を押し下げるのではなく押し上げる方向に働くはずです。ここで使った数字では、種類の構成の影響と価格そのものの変化を切り分けることはできません。

「1980年より安い」はどこまで確かか
BLS自身も、平均価格は「特定の月の価格水準を測るのに最も適しており、時間の経過に伴う価格の変化を測るためのものではない」と説明しています。時間による変化を見るには卵の価格指数を使うよう勧めていて、この指数はグレードAのLサイズという一つの品目より幅広い卵を対象にしています。そこで主な主張を、同じく物価上昇分を調整したこの指数でも確かめました。
二つの物差しは、2026年8月が1980年のどの月よりも安いこと、そして1980年1月から2026年8月までで最も高かったのが2025年3月であることでは一致します。
食い違うのは変化の大きさです。物価上昇分を調整した1980年1月の卵は、2026年8月と比べて、平均価格では1.67倍、指数では1.45倍の値段でした。
1980年1月以降で最も安かった月も食い違います。平均価格では2019年6月、指数では2006年7月です。
賃金と比べた場合も、2026年8月の卵が1980年のどの月よりも安かった点では両者が一致します。1980年1月から2026年8月までの下がり幅は、平均価格で48%、指数で40%です。ただし指数で見ると、賃金と比べて最も高かった月は2025年3月ではなく1984年2月でした。
つまり「1980年より安い」という結論は、ここで見た物価調整と賃金調整のどの物差しでも成り立ちます。もちろん店頭の値段では、1ダースは1980年の88セントより高くなっています。記事中のドルの金額と労働時間(分)は、平均価格から計算したものです。
- US Bureau of Labor Statistics : average price, eggs, Grade A large, per dozen, US city average (series APU0000708111)
- US Bureau of Labor Statistics : Consumer Price Index for all urban consumers, all items, not seasonally adjusted (CUUR0000SA0)
- US Bureau of Labor Statistics : Consumer Price Index, eggs (CUUR0000SEFH)
- US Bureau of Labor Statistics : average hourly earnings of production and nonsupervisory employees, total private, not seasonally adjusted (CEU0500000008)
- US Bureau of Labor Statistics, Handbook of Methods, Current Employment Statistics : concepts (what hourly earnings include and exclude)
- BLS series notes on what the egg average includes and how to use average prices, as republished by FRED, Federal Reserve Bank of St. Louis
- USDA Economic Research Service, "Retail egg prices fall, following declining wholesale prices" (June 2025)
- USDA Economic Research Service, "Avian influenza outbreaks reduced egg production, driving prices to record highs in 2022"








