アメリカでは医療の雇用が製造業より多いのか

多い。差は590万件ある。2026年9月の雇用数は医療が1860万件、製造業が1270万件だった。医療は2008年9月に製造業を抜き、それから毎月上回っている。1990年1月には製造業が医療の2倍以上だった。

ビジネスと経済 · 2026-10-18

交差した2本の線

1990年1月の雇用数は、製造業が1780万件、医療が800万件で、比は2.2対1だった。民間と政府を合わせた農業以外の給与雇用全体に占める割合は、製造業が16.3%、医療が7.3%だった。

このとき工場の雇用は、すでにピークをかなり過ぎていた。ピークは1979年6月の1960万件だ。1990年代にはゆっくり減り、2000年以降は減り方がずっと速くなった。2000年12月の1720万件から、2010年2月には1140万件まで落ちた。9年あまりで570万件の雇用が消えたことになる。医療はその間も増え続け、月ごとに減ったのはまれで、減っても小さかった。2本の線は、2008年の金融危機、いわゆるリーマン・ショック後の大不況のさなかに交差した。2008年8月の時点では、まだ工場の方が約1.2万件多かった。2008年9月には医療が8.24万件上回り、それからは毎月医療が上だ。

数字は米労働統計局(BLS)が毎月行う事業所調査から取っている。毎月発表される米雇用統計のもとになっている調査だ。季節調整済みの給与雇用を数え、それぞれの事業所を主な事業で分類する。そのため、製造業の事業所の給与名簿に載っていれば、その人が実際に何の仕事をしていても工場の雇用として数えられる。2つの事業所の給与名簿に載っている人は、それぞれで1件ずつ数えられる。ここで言う「医療」は、民間の病院、診療所などの外来医療、介護施設や入所型のケア施設を指す。政府の雇用は別に数えられ、高齢者や障害のある人へのサービスといった社会扶助は含まれない。

2008年に医療が工場を抜き、差は広がり続けた · アメリカの給与雇用数(季節調整済み)。1990年9月から2026年9月まで6年ごと · 1990年9月 · 1996年9月 · 2002年9月 · 2008年9月 · 2014年9月 · 2020年9月 · 2026年9月 · 工場の雇用 · 医療の雇用 · 1270万 · 1860万 · 医療は民間の病院、外来医療、介護施設や入所型のケア施設。直近数か月分は速報値。
アメリカの給与雇用数(季節調整済み)。1990年9月から2026年9月まで6年ごと

工場の雇用はなぜ減ったのか

簡単な答えはない。BLSの専門誌「マンスリー・レイバー・レビュー」に2021年に載った記事は、2000年代初めの工場の雇用減について「単一の説明はない」と書いている。そのうえで、2000年に中国がアメリカとの恒久的正常貿易関係を認められたことに触れ、この変化が2000年代の減少の「主要な要因としてよく挙げられる」としている。同じ記事によれば、工場の生産量は雇用ほどには減らなかった。労働生産性が上がり、同じ量を作るのに必要な働き手が少なくなったからだ。ただし、この2本の線は、職を失った工場労働者が医療に移ったことを示すものではない。データが数えているのは各業種の雇用であって、業種の間を移る人ではない。

広がっていく差

2010年2月は、1990年から新型コロナ前までで工場の雇用がもっとも少なかった時点だ。そこから2020年初めまでの間に、工場は130万件の雇用を取り戻した。一方、医療はその2倍以上の280万件を増やした。医療の伸びもまったく途切れなかったわけではない。1990年以降の月ごとの変化440回のうち、減ったのは12回で、そのうち2020年より前は3回だけだった。年平均で見ると、1990年から2025年までに医療の雇用が前の年を下回ったのは、2020年だけだ。

そこへ新型コロナが来た。2020年2月から4月までに、医療は160万件、工場は140万件の雇用を失った。失った数は医療の方が多く、差は一時的に縮まった。ただ、減った割合では工場の方がわずかに大きく、工場が10.7%、医療が9.7%だった。どちらも2022年には2020年2月の水準に戻った。工場は6月、医療は10月だ。その後、2本の線はまた離れている。工場の雇用はコロナ前の水準を再び下回り、2026年9月には9.1万件少なかった。一方の医療は、コロナ前の水準を大きく上回っている。

2010年以降、医療の雇用増は工場の回復分の2倍以上 · 2010年2月から2020年初めまでに増えたアメリカの給与雇用 · 工場 · 医療 · 130万 · 280万
2010年2月から2020年初めまでに増えたアメリカの給与雇用

いまの状況

2026年9月、医療の雇用は1860万件で、1990年の2.3倍になった。製造業は1270万件で、1990年より510万件少ない。両者の差590万件は、医療の統計が始まった1990年以降、どの月よりも大きい。農業以外の給与雇用全体に占める割合は、いまや医療が11.7%、製造業が8.0%だ。

直近1年にも同じ形が見える。2026年9月までの12か月に、アメリカの給与雇用は差し引きで49.6万件増えた。そのうち37.2万件、およそ4件に3件を医療だけで占めた。工場の増加は4万件だった。

BLSは直近数か月分の数字を速報値としており、後から改定されることがある。最新の数字はまだ変わりうる。

直近1年の雇用増の約4件に3件は医療だった · 2026年9月までの12か月に差し引きで増えた給与雇用49.6万件の内訳 · 医療 · 工場 · 372,000 · 40,000 · その他の全業種(差し引き) · 全業種の差し引きの変化。直近数か月分は速報値で、後から改定されることがある。
2026年9月までの12か月に差し引きで増えた給与雇用49.6万件の内訳

定義を変えると何が変わるか

「医療」の範囲をどこで区切るかで変わるのは逆転の時期で、方向は変わらない。BLSがより広い「医療・社会扶助」部門としてまとめるように社会扶助まで含めると、製造業を抜いたのはもっと早く、2004年1月だった。2026年9月の雇用数は2400万件だ。

この先はどうなるか

BLSがもっとも大きな伸びを見込んでいるのも医療・社会扶助だ。2026年1月の「マンスリー・レイバー・レビュー」の記事がまとめた2024年から2034年までの予測では、医療・社会扶助は全部門の中でもっとも速く伸び、増える雇用の数も最大になる。一方、製造業の雇用はほぼ横ばいにとどまる。BLSは主な理由のひとつとして、65歳以上のアメリカ人が増えていることを挙げている。高齢者ほど健康上の問題を抱えやすいからだ。慢性疾患の負担が増していることも理由に挙げている。これらは予測であって実測ではない。対象も、先に見た医療だけの線ではなく、もっと広い部門だ。業種のまとめ方も少し違い、たとえば予測の政府部門には州や地方政府の病院が含まれていない。

アメリカでは医療の雇用が製造業より多いのかアメリカでは医療の雇用が製造業より多いのかアメリカの医療の雇用は、製造業より590万件多い。 · 2026年9月の雇用数は医療が1860万件、製造業が1270万件だった(米労働統計局の給与雇用統計)。直近数か月分は速報値で、後から改定されることがある。 · ※ 医療 : 民間の病院、診療所などの外来医療、介護施設や入所型のケア施設1990年9月 · 1996年9月 · 2002年9月 · 2008年9月 · 2014年9月 · 2020年9月 · 2026年9月 · 工場の雇用 · 医療の雇用 · 1270万 · 1860万 · 2008年に医療が工場を抜き、差は広がり続けた · アメリカの給与雇用数(季節調整済み)。1990年9月から2026年9月まで6年ごと · 医療は民間の病院、外来医療、介護施設や入所型のケア施設。直近数か月分は速報値。工場の生産量は雇用ほどには減らなかった。 · 同じ量を作るのに必要な働き手が少なくなったと、米労働統計局の2021年の記事は書く。2000年代初めの雇用減には「単一の説明はない」とも書いている。職を失った工場労働者が医療へ移ったことは、データからは読み取れない。 · 数えているのは業種ごとの雇用で、業種間を移る人ではない。医療 · 工場 · 372,000 · 40,000 · その他の全業種(差し引き) · 直近1年の雇用増の約4件に3件は医療だった · 2026年9月までの12か月に差し引きで増えた給与雇用49.6万件の内訳 · 全業種の差し引きの変化。直近数か月分は速報値で、後から改定されることがある。雇用がもっとも増えると見込まれるのは医療・社会扶助だ。 · 米労働統計局による2024年から2034年までの予測で、実測ではない。製造業はほぼ横ばい。挙げられた主な理由のひとつは、65歳以上のアメリカ人の増加だ。 · ※ 社会扶助 : 高齢者や障害のある人へのサービスなど出典 8 : fred.stlouisfed.org · [U.S. Bureau of Labor Statistics, All Employees, Manufacturing (MANEMP), via FRED, Federal Reserve Bank of St. Louis], fred.stlouisfed.org · [U.S. Bureau of Labor Statistics, All Employees, Health Care (CES6562000101), via FRED], fred.stlouisfed.org · [U.S. Bureau of Lab全文はこちら · polora.ai